北見工業大学 無機材料・無機物質工学研究室

Inorganic Materials Chemistry Lab. &
Energy related Solid State Chemistry Lab

研究内容

RESEARCH
RESEARCH

ナノ粒子表面への
セラミックス材料の
ナノコーティング技術の
開発

はじめに

一般的にセラミックス材料を使用した高性能デバイスでは、セラミックス材料をナノレベルで複合化する事で優れた特性を発現させる物が多く、これを達成するためにセラミックス薄膜の積層構造を人工的に設計する事が多いです。そのため、平坦な基板上に積層するセラミックス薄膜は、様々な積層構造のデザインにより優れた特性を発現する高機材料として知られています。しかし、セラミックス材料の一般的な形状はバルク形状であり、このような材料に対してナノレベルで複合化するためには、バルクを形成する粒子そのものへの複合化が必要とされます。
これまでこのような材料は、それぞれのナノ粒子の凝集・分散制御により試みられてきましたが、ここで想定される複合化は二次凝集粒子としての複合化であり、一次粒子そのものへの複合化ではなく、薄膜形状の材料で発現するような特異的な特性の発現は期待出来ません。すなわち薄膜形状の材料で行う複合化と同じ事を粒子形状で実現するためには、一次粒子そのものへのコーティング技術の開発が必要不可欠です。
粒子複合化のナノコーティングの概念図

粒子複合化のナノコーティングの概念図

無機材料研究室の取り組み

無機材料研究室では、上述したような粒子表面への異なる材料のナノレベルでのコーティング技術の開発を液相法により実施しています。また液相法には様々な技術が存在しますが、この中でも薄膜作製プロセスとして開発された「液相析出法」、そして高性能複合金属酸化物の作製が可能な「金属アルコキシド法」を基盤として、これまで様々な材料のナノコーティングに成功し、この技術を応用した新材料の開発を、様々な企業との共同研究により実施しています。一般的に粒子表面へのナノコーティングでは、下の概念図で示すように粒子表面での不均一核生成の制御が重要となり、前駆体の化学反応制御が必要です。そのため、特に金属アルコキシド法を用いたコーティングでは、反応制御が容易なシリコンのアルコキシドが多用され、SiO2のナノコーティングについては多くの研究グループが実施しています。
しかし無機材料研究室では、これまで圧電体薄膜を液相合成してきた知見を利用する事で、SiO2以外の材料のコーティングについても成功しました。すなわち様々な研究分野で使用が想定される複合金属酸化物を含む機能性材料をナノレベルで粒子表面にコーティングする事に成功しています。
無機材料研究室の取り組み

これまでの研究実績

無機材料研究室ではこれまでに、様々な研究助成及び企業との共同研究を経て、次のような材料のコーティングについて報告しています。
(企業との共同研究分については公開していません)
1.単純金属酸化物
TiO2、ZrO2、MgO、Al2O3
2.複合金属酸化物
BaTiO3、SrTiO3、Li7La3Zr2O12
SiO2-TiO2
SiO2-TiO2
SiO2-BaTiO3
SiO2-BaTiO3
上に示しているTEM観察結果は、論文発表した材料の一例ですが、このようにナノレベルの一次粒子に対して機能性材料を均一にコーティングする事が可能であり、SiO2粒子以外の材料に対してもコーティングの実績があります。特に複合金属酸化物のコーティングについては、特殊な液相合成を実施する事で粒子表面への複合金属酸化物のコーティングを達成しており、本技術はここに示す材料以外の物についても適用出来る可能性があることから、高性能材料開発の基盤技術になると考えています。

今後の展開

ナノ粒子に対するコーティング技術は、主にSiO2のコーティングについてこれまで多くの研究グループで実施されてきましたが、SiO2以外の材料のコーティングについては、あまり報告がありません。無機材料研究室では、SiO2以外の材料のコーティングに着目し、これまで様々な基礎研究を実施してきました。そして複合金属酸化物を含む様々なセラミックス材料のコーティングに成功し、企業との共同研究を経て多くの新規材料を創出してきました。そして現在も本技術の更なる改良に取り組んでいます。
共同研究先
東洋アルミニウム株式会社
株式会社リコー
サムスン電機
H社
M社
助成金
2010年度 独立行政法人科学技術振興機構 (A-STEP 探索タイプ)
2013年度 ホソカワミクロン工学振興財団研究助成金
2015-17年度 科研費 若手(B) 15K17894
2020-21年度 公益財団法人 前川報恩会研究助成
2020-2022年度 科研費 基盤C 20K05657

成果
特許:特許6590236号  大野智也 松田剛 杉浦知幸
ペロブスカイト型複合酸化物からなる膜を形成する方法、ペロブスカイト型複合酸化
物被覆粒子、触媒、電極及び誘電体材料
解説記事

大野智也 “液相法によるナノ粒子表面への金属酸化物のナノコーティング” 
まてりあ 57(10) (2018) pp.471-478

大野智也 “液相法によるナノ粒子表面への酸化物材料のナノコーティング”
塗装工学 52(3) (2017) pp.4-9

大野智也 "液相法によるナノ粒子表面へのナノコーティング" 
粉体工学会誌 46 (2009) pp.615-620

研究論文

大野智也、丸山尭弘、鈴木北斗、平井慈人、鈴木久男、松田剛、
液相析出法によるナノ粒子表面へのZrO2のコーティング 
Journal of the Japan Society of Powder and Powder Metallurgy 67(2020)
pp.338-342.

 T. Ohno, T. Sugiura, S. Watanabe, H. Suzuki and T. Matsuda
“Preparation of barium titanate hollow particle by two-step chemical solution deposition”
J. Ceram. Soc. Jpn., 121 (2013) 80-83

T. Ohno, K. Numakura, H. Suzuki and T. Matsuda
“Preparation of the BTO-SiO2 hybrid particles for the catalyst of methane steam reforming process”
Mater. Chem. Phys., 134 (2012) 514-517

T. Ohno, K. Numakura, H. Itoh, H. Suzuki, and T. Matsuda
“Control of the coating layer thickness of TiO2-SiO2 core-shell hybrid particles by liquid phase deposition”
Adv. Powder Technol. 22 (2011) 390-395

など