研究内容
重縮合を用いた機能性高分子微粒子の合成
私どものグループでは、重縮合という高分子を作る反応を利用して高分子の微粒子を作る、または高機能化する研究を行っています。
重縮合とは、同じ分子の中に二個以上の官能基をもつ分子(モノマーと言います)を結合させて高分子を作る反応です。例えばナイロン66をつくる反応式を式1に示します。
ここで、高分子以外にHClが脱離して生成しています。このように結合の生成に伴って低分子の化合物が脱離する反応を縮合と言い、それが何度も繰り返されるので重縮合と言います。
いままで高分子微粒子は主に付加重合という重縮合とは異なる反応を用いて合成されてきましたが、私どものグループでは重縮合を用いることを考えました。先に示したナイロンの合成は、ヘキサメチレンジアミンは水に溶け、二塩化アジポイルは油に溶けるためそれぞれのモノマーの水溶液とトルエンなどの有機溶媒の溶液を混ぜて、双方が接する界面で高分子を作ります。これが界面重縮合です。
この重縮合で、有機溶媒の変わりにポリスチレンの微粒子を用いました。式2においてヘキサンジブロマイドはポリスチレン粒子に存在し、主に水中に存在するアルカンジアミンが、ポリスチレン粒子に進入することで重縮合が進行しポリアミンという高分子が得られます。
その結果、ポリスチレンの粒子には反応性の高い塩基性の官能基であるアミノ基を固定化できます。また重合の結果得られた粒子の形はモノマーの種類によって下図のように変化します。やってみないと分からない面もありますが、実験することによって今までなかった物を作ることにつながります。
図1. 重縮合後のポリスチレン粒子(nが異なると形が大きく変わる)
もう一つの重縮合の例として全芳香族ポリイミド(PI)微粒子の合成を行っています。通常のPIは酸無水物というモノマーとジアミンを反応させてまずポリアミド酸を作りこれをさらに加熱して作ります。
私どものグループでは酸無水物の変わりにエステルを用いて一段階でPI微粒子を作ることに成功しました(式3)。
エステルモノマーはカルボキシル基(酸)をもち、もう一つのモノマーであるジアミン(塩基)と塩を作るため極性が高いエチレングリコールに溶けます。一方、これを重合してポリイミドにすると極性がなくなり溶けなくなります。生成したPIが大きな沈殿にならないように分散安定剤を少量加えるとPI微粒子を作ることができます。
モノマーの種類や分散安定剤の量を調整することによって粒子の大きさが揃った微粒子を作製することができました。高分子というと熱に弱いイメージがありますがPIは300℃近くの熱をかけてもほとんど形状が変わりません。図2は300度で加熱処理前後の顕微鏡写真ですが形状にほとんど変化がなく、耐熱性の極めて高い微粒子を合成できたことが分かりました。
図2. 300℃で加熱前後のPI粒子の顕微鏡写真